慢性疾患
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)・上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)
必ずテニスやゴルフでなるというものではなく日常生活でも生じます。
原因
手首や手指を使う運動を司る筋肉は肘に付着しており、繰り返し使いすぎると肘の付着部に炎症を引き起こし痛みが生じます。
症状
手首を使う運動をすると痛みが生じます。肘の内外側に骨が出っ張った部分を押すと痛みが生じることが多いです。
治療
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原因がわかっている場合はその動きを控えて安静にし、症状に対しては投薬、注射、物理療法、リハビリテーションを行います。
“治す”ポイント!
原因の除去がまず第一ですが、ストレッチも非常に有効です。ただ大事なのは肘ではなく手首を伸ばすことで、毎日ご自身でやっていただくことが重要です。病態に合わせたストレッチ法の指導を行います。
肘部管症候群
肘の内側後方に尺骨神経という神経が走っています。これは肘を机などにぶつけたときに指まで電気が走るといった経験がある方は多いのではないでしょうか。これが尺骨神経であり、これが肘の部分で圧迫されることで生じる疾患です。
原因
肘の繰り返す使用、小児期の骨折などで肘が変形したり靱帯が分厚くなったりすることが原因となります。
症状
薬指と小指にしびれと触っても感覚が無いような感覚障害が生じ、悪化すると手指全体が使いづらくなります。
治療
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原因が明らかな場合は原因の除去と安静、投薬を行います。改善が乏しい場合は手術を行います。
“治す”ポイント!
手指がしびれる疾患は多岐に渡るので、まずは本当に肘部管症候群かどうかの診断が重要です。また、神経は一度悪くなると治りも悪くなってしまうので、遅くならないように適切な時期での手術を要する場合もあります。
肘頭滑液包炎
肘の後方の出っ張っている部分が急に腫れてブヨブヨしてくる疾患です。
原因
肘の繰り返す使用や肘を机などによくつくなどの外傷、肘頭部はそのシワシワの構造からも細菌が侵入しやすく感染で発症する場合もあります。
症状
肘が腫れてきて、痛みがある場合も無い場合もあります。細菌の感染が原因の場合は赤く熱を帯びて腫れてきます。
治療
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まずは安静、さらに原因を判定するために貯まった水を注射で引く必要があります。必要な場合は抗菌薬を使用します。
“治す”ポイント!
再発することが非常に多いです。水を抜くと治った気になってしまいますが、すぐに貯まってくることが多いのである程度の期間は固定や圧迫をしておくことも重要です。
手根管症候群
手のひらの手首に近い部分には手根管というトンネルがあり、正中神経や腱が走っています。そのトンネルの屋根の部分である靱帯が肥厚し神経を圧迫してしまう疾患です。
原因
加齢や手の使いすぎなどで屋根の靱帯が肥厚していきます。出産後などに一時的に生じることも多いです。
症状
親指~薬指にかけてしびれと触っても感覚が無いような感覚障害が生じ、悪化するとモノをつまんだりなど親指の動きが障害されます。
治療
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原因が明らかな場合は原因の除去と安静、投薬を行います。改善が乏しい場合は手術を行います。
“治す”ポイント!
手指がしびれる疾患は多岐に渡り、まずは本当に手根管症候群かどうかの診断が重要です。また、神経は一度悪くなると治りも悪くなってしまうので、遅くならないように適切な時期での手術を要する場合もあります。
腱鞘炎(バネ指・ドゥケルバン氏病)
指を動かす腱の支点となり支えているバンド(腱鞘)が肥厚し腱の動きに障害が出てしまう疾患です。
原因
指を使い過ぎる事で支点であるバンド(腱鞘)が擦れてしまい炎症が生じ、だんだんと肥厚していきます。
症状
手指や手首を動かした時の痛みと、バネの様な引っかかり感が生じます。進行すると指が曲がったまま固まって伸ばせなくなります。
治療
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原因が明らかな場合は原因の除去と安静、ストレッチ、投薬を行います。効果が乏しい場合や悪化する場合は注射、手術を要します。
“治す”ポイント!
腱鞘炎にはとにかくストレッチが重要です。適切なストレッチの方法を指導します。また、どうしても改善なく手術となった場合も当院では針を用いた低侵襲の経皮的腱鞘切開(翌日から水仕事も可能)も行っています。
ヘバーデン結節・母指CM関節症
指の中でも良く使う部位ではだんだんと関節の軟骨が傷んできます。悪化すると骨の変形を生じ、指の第1関節に生じたものをヘバーデン結節、親指の付け根に生じたものを母指CM関節症と呼びます。
原因
加齢や使い過ぎによる変化です。リウマチは似た症状を生じますが異なる疾患です。
症状
手指の痛みと変形を認めます。指については粘液嚢腫という水ぶくれが生じることもあります。
治療
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原因が明らかな場合は原因の除去と安静、物理療法、痛みについては投薬を行います。
“治す”ポイント!
とにかく負担を軽減することが重要で、当院では個々の患者様に合わせた装具の提案も致します。どうしても痛みの改善がない場合は母指CM関節症については手術加療も有効な選択肢となります。
外傷(ケガ)
肘内障
幼児に手を引っ張るなど外力がかかったときに、肘の靱帯から骨が外れ亜脱臼のような状態になってしまう状態です。何度も繰り返すこともありますが、肘の靱帯が安定してくる6歳以上になってくると自然と無くなってきます。
原因
腕を引っ張られることが多いですが、遊んでいて自然に生じることもあります。
症状
腕をだらんとしてしまい使おうとしません。本人の訴えがないため、肩が外れたと思って受診される方も多いです。
治療
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ほとんどは外来で瞬時に整復可能です。
“治す”ポイント!
自然と治ることも多いのですが、中には骨折と判別がつきづらい場合があります。お子さんの肘の骨折は成長障害を生じることもありますので、こんなことで受診するなんてなど思わずにおかしいなと思ったらすぐに受診することをお勧め致します。
肘周囲の骨折
肘周囲の骨折は小さなズレでも大きな障害を生じる可能があり、またすぐに固まってしまう関節でもあり、慎重な診断とリハビリが重要な関節です。
“治す”ポイント!
正確な診断と適切なリハビリを要しますので、院長と理学・作業療法士で連携しながら治療を行います。また、お子さんの骨折の場合(上腕骨顆上骨折など)は成長障害が生じる可能が高いのでケガをしてしまった場合は自宅で様子を見るのではなくすぐに当院の受診をお勧め致します。
橈骨遠位端骨折
手関節を構成する親指側の骨である橈骨の骨折であり、高齢者4大骨折の一つです。手首の機能は生活に直結する部分ですので、良い形で治癒させることが重要です。
“治す”ポイント!
大きくズレている場合は骨折部の整復が必要です。そしてその形を維持するためにしっかりとしたギプス固定を要します。手首の関節まで骨折が及んでいたり、あまりにもズレてしまっている場合は手術治療が非常に有効ですので、個々の患者様にあった治療法を判断致します。
槌指(つちゆび・マレット指)
いわゆる突き指で生じた骨折や腱断裂を槌指(つちゆび・マレット指)と言います。手術になることも多い外傷です。
“治す”ポイント!
腱の断裂では手術の効果は限定的であり装具治療が推奨されます。骨折の場合は手術が非常に有効ですので手術加療が勧められます。一見では判断出来ないのでレントゲンの撮影を要しますので、突き指しただけと思わずに早期に当院の受診をお勧め致します。